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Director's interview Vol,6 <br>“crincle crinkle crinkle meets Steiff Schulte and Harris Tweed”

Director's interview Vol,6
“crincle crinkle crinkle meets Steiff Schulte and Harris Tweed”

今シーズンのテーマは、「HIBERNATION DRESSING — 冬眠のための衣服 —」。ドイツのシュタイフシュルテ社の生地を使用したファーコートや、スコットランド北西の諸島で古くから伝わるハリスツイードを使用したジャケットなど、どこか懐かしさやエモーショナルな感情を引き起こすアイテムが揃っています。本コレクションの素材にこめた想いやデザインのこだわりについて、ブランドディレクターである金原広和氏にインタビューしました。

 

 

— はじめに、今回のコレクションのテーマについて教えてください。


ここ数年、温暖化の影響で季節が昔と変わってしまったことを悲しむと同時にもっとファッションとして冬を楽しみたいと思うようになりました。気候だけでなく、さまざまな自然環境の変化ももとはといえば大量生産や大量消費といった利便性を追求してきた人間のエゴに起因するものが多いなかで、季節を意識的に取り戻すことによって、いろんな物事が少しでもいい方向に転ぶんじゃないかなと思い、そういった感情に寄り添うテーマをつけました。


— ビジュアルからも冬のぬくもりやどこか懐かしい情景が浮かび上がってくるように感じます。


大好きだったものに再び向き合うということもテーマに込めて、子供の頃に肌身離さず持ち歩いていたテディベアであったり、大好きなシーツ、手編みのニットなど冬の空気感を連想させるようなイメージです。また、天然の動物繊維といった素材をあえて使用することで、急速に進化する時代に一度立ち止まって考えてみようという気持ちが僕のなかにあって、今回はテディベアを作るためのファーと、動物に対して負荷をかけずに作られてきたハリスツイードという特徴的な生地を本コレクションに選びました。


— それぞれの生地について詳しく教えてください。


ファーは、ドイツのシュタイフシュルテ社でテディベアなどのぬいぐるみに古くから使われている天然のアンゴラ羊毛から作られたモヘア100%の生地です。なぜフェイクと呼ぶかというと、羊の皮を剥いでいるのではなく、伸びた毛を刈ってコットンの下地にパイル状に編み込んでいるから。現在、多くのフェイクファーは石油由来の合成繊維で作られていますが、これは動物由来の天然繊維100%というところに惹かれました。


— 今回はお洋服全体に大胆に使われていますね。


まるでテディベアにハグされているような着心地は、ぜひみなさんにもお試しいただきたいですね。ルック撮影では、シュタイフジャパンさんにもご協力いただいて、シュタイフシュルテ社のテディベアやぬいぐるみが映り込んでいるので、そちらもぜひご注目ください。


— ハリスツイードについても教えてください。


ハリスツイードは、スコットランドの北西の諸島で育てられた羊たちの天然のバージンウールのみを原料として、島内ですべての生産を行う伝統的な織物です。その特徴はピュアさ。一般的にツイードのような紡毛は、強度を高めるためにナイロンを入れたりするのですが、このハリスツイードは何も混ぜずにバージンウールのみを使っているところに惹かれました。経年変化による風合いを楽しむことができ、ヴィンテージやデニムのように育てる楽しさがあると思います。


— 歴史のある生地ということもあり、ヴィンテージライクな印象に仕上がりますね。


お客さまによっては、懐古主義と捉えてあまり惹かれない方もいらっしゃるかもしれません。ライフスタイルや時代に合わせてファッションはいい意味で移り変わるもの。機能性のある新素材もどんどん開発されています。ただ、僕個人としてはテキスタイルに長年携わってきたという背景もあり、それぞれの生地に対する想いや愛情、なによりも今回のコレクションのテーマには必要不可欠なものでした。


— 長く愛されてきた生地を使って、これからも長く愛されるものを作る。テーマが一貫されていますね。


このような伝統的な技術を使った生地というのは、西陣織や岡山の優れたデニムなど日本にもたくさんあります。希少価値が高く、コストもかかるため日本のメーカーで扱うにはまだ課題もありますが、最近では、シャネルやエルメスといった海外のメゾンブランドがそういった優れた技術を残していくために支援を行っています。いつかは僕らもそういった国内の素晴らしい生地を使った、日本発信のブランドになれたらと思っています。


— 金原さんならではの想いから、この二つの生地をメインにしたコレクションが完成されたのですね。


そうなんです。どちらも100年以上の歴史があり、それが今でも残っているということが素晴らしいですし、自分のブランドで形にすることができたというのも個人的にとても嬉しいです。


— これらの素材をお洋服のデザインに落とし込むうえで、こだわられたポイントについて教えてください。


そのままヴィンテージライクに仕上げるのはつまらないなと思い、ブルマのようなショーツや、レイヤードして楽しめるビキニトップやミニスカートなど、僕自身が楽しみたい今の気分やスタイルを反映しました。


— ハリスツイードのジャケットは、一見オーセンティックな感じもします。アップデートされたポイントについても教えていただけますか?


やはりハリスツイードなので、オーセンティックさも大事にしたいと思っていて、あえて別注ではなく多く使われている柄を選びました。ポイントはバックについた3つのボタン。外すとテールのようになり、デザインの変化を楽しめます。本来、ハリスツイードは漁師さんたちの上着として使われていて、ヴィンテージで出回っているものはボックスシルエットでオーバーサイズのものが多く見られます。レディースがそういったメンズライクなジャケットをぶかっと着るのも可愛いですが、今回はあえてうちでは珍しいジャストなシルエットで作りました。あとは、フロントのボタンの位置を低めにしていたりと細かなディテールにこだわっています。


— おすすめの着こなしはありますか?


どちらのアイテムもデニムとの相性がいいので、デニムパンツなどのレイヤリングはおすすめです。ただ、次のファッションの流れも来るので、もっと自由に好きに楽しんでもらえたら。僕もみなさんの着こなしを楽しみにしています。


— 最後に、最新コレクションを楽しみにされているお客さまに向けてメッセージをお願いします。


シンプルにあったかいとか、気持ちいいとか、なんだか優しくなれるといった感情がこのお洋服を纏うことで生まれてくれたら嬉しいです。家にぱっとかかっているだけでも、可愛くって愛でたくなるようなお洋服ってあるじゃないですか。特にこのシュタイフシュルテ社の生地を使ったアイテムに関してはその感情が生まれてくれたら嬉しいですね。だって、テディベアに包まれているんですから。


— 着てる自分を見るだけでも気分が上がりますよね。


人によっては、生地まで見ずに通り過ぎてしまうということもあると思いますが、着ている自分だけはその価値をわかっているというか、「これって実はテディなんだよな」って誇らしく思えるマインドが生まれてくれたらいいなと思います。押し付けるとかではなく、流れで「実はさ……」って話してみたら、「へー!着てみたい!触らせて」なんてコミュニケーションが生まれたりして。そうやってより楽しいことが始まったらいいですよね。




Brand director
金原 広和(きんばら ひろかず)


長年テキスタイルデザイン会社にて企画営業に従事し、コレクションやメゾンブランド、セレクトショップを担当。現在はアパレル会社にてテキスタイルデザインチームを運営しながらトレンド予測やブランドのディレクター兼デザイナーを兼任している。


Instagram : @kin.summer.summer.



Edit&Text/Mikiko Ichitani

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